最新作「Katabatic LT Mid GTX」のスタイリッシュなルックスに秘められた、その実力とは? アウトドアライター 高橋庄太郎氏が徹底レビュー!

高橋庄太郎

山岳/アウトドアライター

Katabatic LT Mid GTX ミッドカット

大きな期待とともに2023年に発売開始され、多くのユーザーから好評を得た「オボズ」の"Katabatic(カタバティック)"シリーズ。今期はさらにパワーアップし、いくつかの新作が加わっている。今回ここでピックアップするのは、"Katabatic LT Mid GTX"。これまでのKatabaticのDNAを受け継ぐ、防水性のミッドカットモデルだ。

モデル名に入っている"LT"とは"LIGHT"のこと。同シリーズのなかでもKatabatic LT Mid GTXは軽量性に秀でているのが大きな特徴で、重量は372g(27.0cm/片足)だ。

足首クッション

軽量性を生かしたスピードハイキングやファストハイクでの使用を視野に入れながらも十分な保護力やグリップ力を持っており、一般的な登山でも使いやすく仕上がっているのが大きな特徴である。

機能性を突き詰めた各部の特徴

では、はじめに各部ディテールを見ていこう。

先に述べたように、Katabatic LT Mid GTXはミッドカットモデルである。

タンデザイン

ひとくちにミッドカットといっても、シューズによってアッパーの高さはさまざまだ。それで言えば、Katabatic LT Mid GTXのアッパーは少し低め。普段ローカットを履いている人でも違和感なく履けるような設計である。しかも、アキレス腱の部分が少しくぼんでいることもあり、ミッドカットといえども足首周りの可動域は広い。

内側をのぞき込むと、足首をぐるりと巻くように厚めのクッション性素材が配置されていることが一目でわかる。

アッパー素材

この立体的な構造によって、足首をほどよく包み込み、極上のフィット感をもたらすわけだ。

おもしろいのは、タンのデザインである。逆三角形状に中央上部が低くなっているのだ。

つま先部分

これは足首が前傾したときにタンが邪魔にならないようにという考えからの設計だろうか。このような形状のシューズは珍しく、デザイン上のポイントにもなっていて、スタイリッシュな雰囲気を醸し出すのに一役買っている。

アッパーの表面は速乾性に優れるメッシュ素材で、リサイクルポリエステルが100%使われている。その上には薄いグレーのTPUコーティングを線状に施し、擦れて傷みやすいアッパーを強化するとともに歩行中のアッパーの伸びを抑えている。

シューレース

そして、このアッパーは内側に防水透湿素材のゴアテックスが使われているとは思えないほど薄くてしなやかだ。

じつは、Katabatic LT Mid GTXに採用されているのは、ゴアテックスのなかでも「GORE-TEX インビシブルフィット」という最新テクノロジー。具体的にいえば、アッパーの素材とGORE-TEXファブリックをダイレクトに密着させる技術で、これまで以上に薄く、折り目やしわが少ないアッパーに仕上がり、生地が吸い込む水分も抑えられて乾きも速い。重量は従来のゴアテックスブーティ構造のものよりも約18%も軽くなるらしい。

「GORE-TEX インビシブルフィット」によって作られたアッパーは厚みを抑えられるため、圧迫感が少ないのがひとつの長所だ。だから、Katabatic LT Mid GTXのシューズ先端は一見ではかなり細く感じるが、想像するほどタイトではない。指先まわりに余裕があるとも言い換えられる。

アウトソール

このつま先付近もTPUで強化され、岩などにぶつかったときの衝撃を和らげつつ、シューズを破損しにくくしている。

シューレースは細身の平紐だ。

アウトソール中央

シューズにぴったりと密着してフィット感を高め、歩行中に草木に引っ掛かることも少ない。シューレース先端についている細いループは、ゲイターを組み合わせて履くときに使うものである。

こちらはアウトソール。5㎜厚のラグは縦ではなく横を中心としたパターンで配置されており、地面を蹴ったときの前進力を重視している。

ミッドソール

いかにもスピードハイキングやファストハイクを意識した設計だ。アウトソールの中央は大きくくぼんでおり、アウトソールの屈曲性を高めつつ、シューズの重量増を抑えることにも貢献している。

インソール

見えない部分でいえば、アウトソールの内側にはプレートが入り、歩行中の過度なねじれを防止している。

サイドから眺めると、ミッドソールは少し分厚く見えるかもしれない。

着用

だが、実際は"足裏"のミッドソールは見た目ほど厚くはない。しかし、その足裏のミッドソールから延長したTPU素材がかかとの左右と後部に高く張り出しているため、それによってミッドソールが分厚く見えるのだ。この部分はかかとを左右から抑え込み、歩行中の体を安定させるのに大きな貢献をしている。

シューズ内部にはオーソライト社と共同開発した非常に立体的でフィット感が高いインソールが収められている。このインソールもかかとを左右から抑え込み、いっそう安定性を向上している。

歩行

シューズを正しくフィットさせ、歩行時の体のバランスを理想的に保つための第一歩は、かかとを安定させることから始まる。そのセオリーに忠実に、Katabatic LT Mid GTXは設計されているのであった。

期待の新作を履いて、フィールドへ!

では、実際に足を入れてみよう。

歩行2

うん、なるほど。Katabatic LT Mid GTXは全体的に細身で、とくにつま先にかけてシェイプされている。それでも圧迫感を覚えないのは、「GORE-TEX インビシブルフィット」による厚みを抑えたアッパーのおかげだろう。フィット感は上々である。

なお、ここでシューズをテストしている僕の足は、足幅がとくに広くも狭くもない標準的な形状だ。足幅がかなり広い人には合わない可能性もあるので、興味を持たれた方は実際に試し履きすることをお勧めしたい。

歩きだしてすぐに感じたのは、やはりKatabatic LT Mid GTXの軽量性だ。

グリップ

まるでローカットのように軽やかで、スムーズに足が前へ出ていく。

晴天

アウトソールが土に食い込む感覚も心地よい。

防水テスト

Katabatic LT Mid GTXのアウトソールのラグは深さが5㎜。ぬかるんだ場所ではさすがに5mmのラグでは泥の中に埋没してしまうが、そんな場所でもなければ十分なグリップ力である。

岩石路

かかとの収まりもよく、強く踏み出してもかかとがシューズ内で浮くことはない。僕はシューレースを弱めに結び、あえてフィット感を緩めにして歩いてもみたが、それでもかかとはほとんど浮かず、Katabatic LT Mid GTXの足型とかかと部分の構造のよさには感心してしまった。

この日は晴れ。登山には適しているが、それではKatabatic LT Mid GTXの防水性は判断できない。

岩石路歩行

そこで僕は登山道の脇にあった沢のなかへ。シューズを甲の部分まで水中に沈め、数分立ち止まってみた。

岩石路歩行2

しかし、シューズ内部への浸水は一切なし。さすがはゴアテックスを採用したモデルだ。また、アッパー表面の撥水力が高いために、水中からシューズを出せば表面に水分はあまり残らない。そんなこともあって、再び歩き始めると、いつしかシューズはすっかりと乾いていた。これだけの機能性があれば、登山中に雨が降っても安心だろう。

標高を上げていくと、登山道の地面には大小の岩や石が目立つようになってきた。

着地

さて、このような場所でのKatabatic LT Mid GTXの歩行感はどのようなものだろうか?

滑りやすい石

アウトソール、ミッドソールともにそれほどの厚みはないKatabatic LT Mid GTXだが、地面の凹凸はあまり感じない。なかなか快適である。

つま先保護

足裏とアウトソールの間に挟み込まれているプレートは、ねじりを防止するだけではなく、岩や石の凹凸を緩和する力があるようだ。

稜線

また、着地した際のミッドソールのクッション性も良好である。過度な反発力はないので安定感があり、着地時にシューズがぶれる感じが少ないようなのだ。

沢近くの地面には思いのほか滑りやすい石もあり、足を置いた石の上からシューズがずれることもあった。以下の写真は、そのような状況を再現したものである。

岩場グリップ

こんなときでも捻挫しにくいのは、さすがミッドカット。足首周りには厚めのクッション素材が配置されているので、足首に力がかかっても痛みはほとんど感じない。

岩に足をぶつけたときも同様で、厚みのあるTPUで守られているつま先は十分に衝撃を緩和してくれた。

岩場グリップ2

ただ、Katabatic LT Mid GTXは軽量性を重視したシューズであり、その保護機能はやはり限定的である。岩稜帯を歩く区間が長いような山域では、同じオボズでもBridger Ridge Mid GTXのようなタイプがよさそうだ。

強い日差しのなか、稜線に出る。気温が上がり、全身に汗が噴き出してくる。

下山

それでもシューズ内部にあまり蒸れは感じない。アッパーの生地が薄いこともあって、透湿性が理想的に発揮されているようだ。蒸し暑い時期にはとてもうれしい機能性だ。

岩場でもKatabatic LT Mid GTXのアウトソールのグリップ力には問題がなかった。

スピードハイク

少しソフトなアウトソールは岩肌によくなじみ、スリップする心配を感じずにすむ。

全体像

岩稜帯が長々と続く高山はともかく、岩場がときおり出てくる程度の中~低山であれば、ミッドカットのKatabatic LT Mid GTXでも十分だと思われた。

ここから下山に入る。

下り道では登り道以上にシューズと足に負担がかかるものだ。そこで僕は改めてシューレースを結びなおして、フィット感を調整。平紐は丸紐よりも緩みにくく、安心感が高いのがいい。

下山時はスピードハイクをイメージして、小走り気味にトレイルを進んだ。

こういうときにローカットを履いていると足さばき自体は軽快だが、捻挫を起こさないかと少し心配になる。その点、ミッドカットは着地時に安定していて心強い。僕はミッドカットタイプのシューズもローカットタイプのシューズも愛用しているが、難路が多い山ではミッドカットを多用している。Katabatic LT Mid GTXならば、高低差が大きい山や足元が不安定なトレイルでもその実力を発揮してくれるだろう。

汎用性が高く、活躍の場が多い一足

スピードハイクやファストハイキングをイメージしたKatabatic LT Mid GTXは、その開発コンセプトの通りに軽快でスピーディな行動を可能にするシューズだった。その軽量性は疲れの軽減につながり、長距離・長時間行動に適したモデルだといえる。

それでいて、足首を守るミッドカットのアッパーやグリップ力が高いアウトソールは、石が多い登山道や岩場での安定力も高い。そんなKatabatic LT Mid GTXは、一般的な登山でも実力を発揮してくれるはずだ。

アウトドア用のシューズは、できることならば目的のフィールドに合わせて数種類を使い分けるほうがいい。しかし予算には限りがあり、何足もそろえられない方は多いだろう。その点、Katabatic LT Mid GTXは緩やかな低山からちょっとした岩場がある山まで汎用性が高く、多様なシチュエーションで使い勝手がいい。手元に一足あれば、春から秋まで大いに活躍してくれるに違いない。



Katabatic LT Mid GTX
カタバティックエルティー ミッド ジーティーエックス(防水)
34,100円

サイズ:25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29cm
カラー:Black Sea、Drizzle
重さ:372g(27.0cm/片足)

高橋庄太郎

山岳/アウトドアライター

1年のうち半分は山中を歩き、残りの半分は自宅での記事製作。アウトドア系ウェブサイトや雑誌での執筆活動のほか、イベントやテレビへの出演も多い。著書に『山道具、選び方、使い方』『トレッキング実践学』など多数。

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